「派遣先から有給を取らないでと言われた」
「人手不足だから有給は無理と言われた」
「派遣元には申請したけど、派遣先にも言う必要があるの?」
派遣社員として働いていると、有給休暇についてこのような疑問を持つことがあります。
結論からいうと、条件を満たした派遣社員には年次有給休暇が認められており、派遣先の都合だけを理由に自由に取得を止められるものではありません。
ただし、会社側には、請求された時季に有給を与えることで事業の正常な運営を妨げる場合に、別の時季へ変更する「時季変更権」があります。
さらに派遣の場合は、法律上の申請先と、実際の職場で先に伝えておく相手が少し違うため、ここを理解しておくことが大切です。
この記事では、派遣営業として8年間働いてきた経験をもとに、派遣の有給休暇を拒否されたときの考え方や、実際にどう対応すればいいのかをわかりやすく解説します。
この記事の結論
・派遣社員も条件を満たせば有給休暇を取得できる
・正式な有給休暇の申請先は原則として派遣元
・実際の勤務先である派遣先にも、休むことを先に伝えておくとスムーズ
・派遣先の「忙しい」「人手が足りない」だけで、当然に有給を取れなくなるわけではない
・断られた場合は、まず派遣元の担当営業に相談する

派遣の有給休暇は拒否される?
原則として、条件を満たしている派遣社員の有給休暇を自由に拒否することはできません。
年次有給休暇は、労働基準法に定められた制度です。
厚生労働省も、労働者が請求した時季に有給休暇を与えることが原則であり、事業の正常な運営を妨げる場合に限って、別の時季へ変更できるとしています。
つまり、「派遣だから有給を取れない」「派遣先が忙しいから有給は認めない」という単純な話ではありません。
ただし、「拒否」と「別の日への変更」は別物です。
「有給そのものを認めない」と「日程を変更する」は違う
会社側に認められているのは、一定の場合に有給を取得する時季を変更することです。
たとえば、指定した日に有給を取得すると事業の正常な運営を妨げる事情がある場合、別の日に変更することがあります。
一方で、単純に「有給は使わないで」「派遣だから休まないで」として、有給休暇そのものを使わせないという扱いとは別です。
厚生労働省も、年次有給休暇について「付与しない」とすることはできず、一定の場合には他の時季に変更できると説明しています。
派遣社員が有給を取得するための条件
まず、有給休暇を取得できる状態か確認しましょう。
原則として、入社から6か月継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤すると、年次有給休暇が付与されます。
その後も一定の条件を満たせば、勤続年数に応じて有給休暇の日数が増えていきます。
派遣社員の場合も同じで、派遣元との雇用関係の中で年次有給休暇が付与されます。
そのため、「派遣先が変わったから有給がリセットされる」というわけではありません。
有給申請は派遣元と派遣先、どっちにする?

ここは派遣社員の方が特に迷いやすいポイントです。
法律上の年次有給休暇の申請先は、原則として派遣元です。
東京労働局も、派遣労働者の年次有給休暇の申請先は派遣元事業主と案内しています。
つまり、正式な有給申請については、派遣会社の勤怠システムや担当者など、会社で決められた方法で申請します。
でも、派遣先にも先に伝えておくのがおすすめ
ここは、法律上の申請先とは別に考えたほうがいいポイントです。
実際に仕事をしているのは派遣先なので、「○日に有給を取得します」と派遣先の上司や担当者にも事前に伝えておくほうが、現場ではスムーズです。
おすすめの流れは、次のイメージです。
① 派遣先に伝える
「○日に有給を取得したいです」
↓
② 派遣元に申請する
会社指定の方法で正式に有給申請
↓
③ 必要に応じて派遣元が派遣先と調整
↓
④ 有給取得
厚生労働省も、派遣元と派遣先が年休取得時の手続きなどについて協力できる体制を整えることが望ましいとしています。
派遣営業からすると「有給を取る事実」を把握しておきたい
ここは、派遣社員の方には少し意外かもしれません。
派遣営業が毎回、派遣先と「このスタッフが有給を取るので、どうしましょう」と細かく調整しているわけではありません。
通常の有給取得であれば、派遣営業として重要なのは、まず「このスタッフは○日に休む」ことを把握しておくことです。
なぜなら、派遣先からスタッフの勤務状況について確認されたときに、担当営業が休みの事実を知らないと話が合わなくなるからです。
派遣営業の実務イメージ
スタッフ
↓
派遣先へ「○日に休みます」と伝える
↓
派遣元へ有給申請
↓
派遣営業も「○日は休み」と把握
通常の有給取得なら、毎回派遣元営業が派遣先と細かく調整するとは限りません。
もちろん、派遣元側から調整が必要になるケースもあります。
派遣元営業が派遣先と調整することがあるケース

たとえば、次のようなケースです。
- 次の仕事を探すための職場見学がある
- 派遣元側の都合で有給取得をお願いする
- 通常の休暇とは別に勤務スケジュールの調整が必要
- 派遣先との業務調整が必要になる
- 代替スタッフなどの対応が必要になる
このような場合は、派遣元の営業担当が派遣先へ連絡して調整することがあります。
一方、スタッフが通常の有給を取得するたびに、営業担当が派遣先へ細かい確認をしているとは限りません。
「法律上の申請先」と「現場での情報共有」を分けて考えると、派遣の有給休暇はかなりわかりやすくなります。
派遣先から「有給を取らないで」と言われたら?
まず、感情的に「違法ですよ」と言い返す必要はありません。
最初に確認したいのは、誰から、どのような理由で、どのように言われたのかです。
よくあるケース①「忙しいから休まないで」
派遣先が忙しいからといって、それだけで有給休暇を自由に止められるわけではありません。
年次有給休暇には、会社側の時季変更権がありますが、法律上は「事業の正常な運営を妨げる場合」が前提です。
そのため、「忙しいから」という一言だけで判断するのではなく、具体的な事情を確認する必要があります。
よくあるケース②「人が足りないから無理」
これも同じです。
派遣先に人が足りないという事情があったとしても、それだけで派遣社員の有給取得を当然に抑制してよいということにはなりません。
厚生労働省は、派遣先の事情によって派遣労働者の年休取得が抑制されないよう、派遣元が代替労働者の派遣や派遣先との業務量調整などを行うことを示しています。
よくあるケース③「派遣だから有給は自由に取れない」
これも正しくありません。
派遣社員であっても、法律上の条件を満たせば年次有給休暇が付与されます。
「派遣だから有給が使えない」というルールがあるわけではありません。
有給を拒否されたら、まず派遣元の営業に相談する
派遣先から有給について何か言われた場合、いきなり外部機関へ相談する前に、まずは派遣元の担当営業に事実を伝えるのがおすすめです。
たとえば、次のように伝えれば十分です。
「○日に有給を取りたいと派遣先に伝えたところ、『忙しいので取らないでほしい』と言われました。どう対応すればいいでしょうか?」
これなら、営業担当も状況を把握できます。
営業側から派遣先へ確認する必要があるケースなら、営業が対応します。
有給を拒否されたときの5ステップ
STEP1:誰に何と言われたか整理する
まずは事実を整理します。
- 誰から言われたのか
- いつ言われたのか
- どの日に有給を取りたいのか
- なぜダメと言われたのか
- 口頭なのか、メールなのか
「なんとなく有給を取るなと言われた」ではなく、できるだけ具体的にしておきましょう。
STEP2:派遣元の担当営業へ伝える
次に派遣元へ相談します。
特に、派遣先から「有給を取らないで」と言われた場合は、担当営業に共有しておきましょう。
営業としても、派遣先とのやり取りをする際に、スタッフがどのような説明を受けているのかを把握しておく必要があります。
STEP3:派遣元から回答をもらう
派遣元から、
- そのまま取得して問題ないのか
- 別の日への変更が必要なのか
- 申請方法に問題がないのか
- 派遣先との調整が必要なのか
を確認します。
STEP4:必要なら日程を調整する
会社側に時季変更権が認められる事情がある場合は、別の日に変更することがあります。
ただし、これは「有給を使わせない」という話ではありません。
取得時季を変更することと、有給そのものを拒否することは分けて考えましょう。
STEP5:解決しない場合は外部へ相談する
派遣元に相談しても解決しない場合は、総合労働相談コーナーや労働基準監督署などの公的な相談先を利用する方法もあります。
状況によって相談先が変わるため、まずは自分のケースを整理して相談しましょう。
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有給休暇を申請するときに気をつけたいこと
① 派遣先への共有を忘れない
正式な有給申請先は派遣元ですが、実際に勤務している派遣先には、休む予定を事前に伝えておくほうがスムーズです。
特にシフトや業務分担がある職場では、現場への共有がないと「今日休むとは聞いていない」という状態になる可能性があります。
② 派遣元への申請方法を確認する
派遣会社によって、勤怠システムから申請する会社もあれば、担当営業や管理部門へ連絡する会社もあります。
「派遣元には当日伝えればいい」と一律に考えるのではなく、自分の派遣会社の申請ルールを確認してください。
③ 有給を取る理由を必要以上に説明しない
年次有給休暇は、原則として利用目的を問わず取得できます。
「旅行に行く」「家族の予定がある」「休養したい」など、理由によって有給取得の権利が変わるものではありません。
ただし、派遣先への勤務上の共有として「○日に休みます」と伝えることと、有給取得の理由を細かく説明することは別です。
「有給を取ると派遣先から評価が下がる?」
これも気になるところです。
有給休暇は労働者に認められた制度なので、必要以上に「有給を取ったら嫌われる」と考える必要はありません。
一方で、派遣先への連絡が直前になったり、業務の引き継ぎをまったくしなかったりすると、職場での印象に影響する可能性はあります。
そのため、有給を取らないことではなく、きちんと事前に伝えて業務を整理することが大切です。
派遣営業8年の経験から伝えたい「有給は早めに伝えてほしい」理由
派遣営業の立場からすると、有給を取得すること自体が問題なのではありません。
むしろ営業として困るのは、スタッフが休むことを営業が把握していない状態です。
派遣先からスタッフの勤務状況について確認されたときに、営業が「今日休みだったんですか?」となると、話がややこしくなります。
そのため、通常の有給取得であれば、派遣先に事前に伝え、派遣元にも正式に申請しておく。
これだけでもかなりスムーズになります。
もちろん、職場見学などで派遣元から調整が必要な場合は、担当営業から派遣先へ連絡して調整することがあります。
派遣営業の本音
「有給を取らないでほしい」というより、
「休むなら、ちゃんと把握できるように伝えてほしい」
というのが実務上は大きいです。
派遣の有給休暇についてよくある質問
Q. 派遣先から「有給は取らないで」と言われました。従うべきですか?
まずは派遣元の担当営業へ相談してください。
派遣先の事情だけで当然に有給取得ができなくなるわけではありません。ただし、具体的な状況によっては時季変更の問題が生じる可能性があります。
Q. 有給申請は派遣先だけにすればいいですか?
いいえ。年次有給休暇の正式な申請先は原則として派遣元です。
ただし、実際に勤務している派遣先にも、休む予定を事前に伝えておくとスムーズです。
Q. 派遣元にはいつまでに申請すればいいですか?
これは派遣会社のルールによって異なります。
勤怠システムや就業規則などで申請期限を確認してください。
Q. 「人手不足だから有給は無理」と言われました。
人手不足という事情だけで、当然に有給取得ができなくなるわけではありません。
まずは派遣元の担当営業に状況を伝え、会社側の対応を確認しましょう。
Q. 有給を取ったら派遣先から契約更新されなくなりませんか?
有給休暇を取得したことを理由として不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
ただし、契約更新には勤務状況や業務上の評価など、さまざまな事情が関係します。
「有給を取ったら必ず契約更新されない」というものではありません。
まとめ|派遣の有給は「申請先」と「現場への共有」を分けて考えよう
派遣社員の有給休暇について、最後にポイントを整理します。
- 派遣社員も条件を満たせば有給休暇を取得できる
- 正式な有給申請先は原則として派遣元
- 派遣先にも休む予定を事前に伝えておくとスムーズ
- 派遣先の「忙しい」「人手不足」だけで当然に有給を拒否できるわけではない
- 会社側には一定の場合に時季変更権がある
- 有給を拒否されたら、まず派遣元の担当営業に相談する
- 派遣営業にとっても、スタッフがいつ休むのかを把握しておくことは重要
派遣の有給休暇は、「派遣元に申請すれば終わり」と考えるより、派遣先への現場共有と、派遣元への正式な申請を分けて考えるとわかりやすくなります。
もし派遣先から「有給を取らないで」と言われた場合も、一人で判断せず、まずは派遣元の担当営業に事実を伝えて相談しましょう。
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